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桜新町のテナントビル
東京都世田谷区
retail
medium scale

東急桜新町駅近くの住宅地と商業地の境に建つテナントビル。内部空間はテナント設計に配慮し、柱やPSのない、まっさらで四角いハコとした。ハコの構造と外壁は、敷地のそれぞれの面に応答する形であること、資産価値を保つことを目的として、各面選定している。ファサード空間の資産価値に向き合った結果、街並に寄与する建築となったと考える。 
長期にわたり価値を生む建物について、デベロッパーと設計者が、最初からチームで考えたプロジェクトである。 
主要な設計条件は次の通りである。(1)テナント設計に配慮したシンプルな形状の空間(2)減価償却期間を最大化させる為のRC構造の採用 (3)長い時間に耐えるデザイン (4)住宅地への配慮と商業としての構えの両立。 
具体的には、接道部分の外壁をルーバーと大きなガラスで装飾することで、敷地周辺に対応する4つのファサードを持つ建築を目指した。ルーバーにより周辺の住宅地に溶け込む雰囲気をつくると同時に、ルーバーと外壁の隙間をPSとして利用することで、内部と外部に裏を作らない計画となっている。また、大きなガラスの空間は、幅員の大きな道路に面した商いの構えを担うと同時に、将来都計道範囲の解体予定範囲に対応する、鉄骨柱と鋼鉄製建具でできた軽やかな空間とした。皆で掲げた、複数の条件への解答の形を議論し続けたプロジェクトである。
「この街の要になるようなテナントビルをつくり、長く所有したい」というデベロッパーの意志に、具体的な形で答えるよう努力した。単純な平面と階高指定があった為、建物配置と部位の組立て方が設計の主となると考えた。まっさらな四角の内部空間は、外部側に柱型を出すRC壁造で実現した。柱付壁造は壁厚が薄く面積を確保でき、リーズナブルな構造となっている。また、建物の四周に1〜2mの余白を与え、立面に出てくる配管を注意深く配置し、四面ともエントランスを配置することができるデザインとした。四面とも正面になれる可能性を持つことは、構成を大きく変えるリノベーションを可能にする為、長い期間テナントを獲得しやすくなると考えた。そして、余白に面するガラス/ルーバー/階段/手摺/庇などの部位は、耐用年数を鑑みて、通常より大きな部材で設計している。部材の大きさの集積が街につながる余白を彩り、街の要の空間となっていると感じている。